前回より、計4回にわたってお伝えしているIVFクリニックの選び方。本日2回目は、IVFクリニックの違いが現れる、新鮮胚移植と凍結胚移植についてお話ししたいと思う。
医療の分野に関することなので、本文・文中に出てくる医療用語など、あくまでも参考にとどめていただき、実際にあなたがIVFを受ける際には、実際のクリニックのドクターの説明をよく聞き、治療をうけていただきたい。
新鮮胚移植と凍結胚移植のちがい
IVF(体外受精)においては、受精卵を培養して子宮に戻す「胚移植」が行われる。この胚移植には新鮮胚移植(Fresh Embryo Transfer)と凍結胚移植(Frozen Embryo Transfer)とあり、どちらを推奨しているかはクリニックによって違う。
名前だけ聞くと新鮮胚移植の方が良さそうだという印象があったが、調べてみたり、ドクターの話を聞くとそうでもないらしい。
その基本的な違いとして、新鮮胚移植では、卵子提供者から採卵した卵子を精子と受精させ、その胚を数日かけて培養、それを代理母の子宮に移植(Transfer)する方法。一方、凍結胚移植は培養した胚を一度凍結をさせて保存し、時期をみはからって解凍(融解)させたものを、母体のサイクルに合わせ移植することになる。
近年の凍結胚移植の技術
受精卵を凍らせて解凍(融解)するというのは、その胚にダメージがあるのではという印象がある。しかしながら、近年の冷凍技術によりその胚の生存率や、着床と妊娠率は劇的に向上しているようだ。
その方法として現在主流と言われているのが、約10年ほど前に導入されはじめた超急速ガラス化保存法(Ultra-rapid embryo cryopreservation (vitrification))という方法。従来用いられていた緩慢凍結法の約6万倍も早く、急速に凍結することで胚細胞内の氷の形成をもたらさず、細胞を傷つける可能性を抑え、胚の生存率や染色体への影響を少なくすることができる。着床と妊娠の可能性は緩慢凍結法のと比べ90%以上も高くなり、特にその解凍(融解)時の影響が少ないという。
この超急速ガラス化保存法の、着床と妊娠の可能性の高さは、少なくとも新鮮胚移植とほぼ同じ、ときにはそれ以上だということだ。もちろん、この新しい技術をもってしても、胚に与えるダメージがゼロになるわけではないそうだ。
凍結胚移植、成功率の高さの理由
基本的な妊娠のプロセスとして、当然のことではあるが、女性の体には妊娠しやすい時期とそうでない時期のサイクルがある。体外受精でできた胚もしかり、母体にその胚を移植したところで、その女性の体の準備ができていなければ 妊娠することはできない。
つまりIVFでできた胚が数日かけて培養され、移植・着床に適した時期が、母体となる女性の体の妊娠しやすい時期と一致していれば、着床・妊娠の可能性が高くなるということだ。
IVFにおける移植に際しては、新鮮胚移植でも凍結胚移植でも、超音波検査や血液検査で子宮内膜の状態、またホルモンのバランスなどを数値で確認し、妊娠しやすい環境が整っているかを、ドクターが判断することになる。
新鮮胚移植では、胚の状態(受精後何日目なのかなど)と母体の状態をチェックし、その移植のタイミングをはかるのが難しいらしいのだが、凍結胚移植の場合、ドクターが母体の準備ができていると判断した場合、その当日に凍結胚を融解し、移植することができる。
それが妊娠の成功率の高さにつながり、そのまま子どもを授かる可能性も高くなるということだ。また、移植日の日程が立てやすいことは、代理母が受ける負担が軽くなることにもつながる。
補足にはなるが、凍結胚移植の場合、その保存のためのコストがかかるが、それを負ってでもする価値があると、個人的には考えている。
まとめ
- 胚移植には新鮮胚移植と凍結胚移植がある
- 近年主流になっているのは超急速ガラス化保存法という凍結胚移植
- 着床と妊娠の成功率は、少なくとも新鮮胚移植とほぼ同じ(もしくはそれ以上)
- 母体の状態に合わせ、移植日に融解できるので、妊娠成功率が高くなる
- 冷凍保存にはコストがかかる
新鮮胚移植か凍結胚移植か、そのどちらを進めるかはクリニックによってまちまちのようだった。しかしどちらかというと凍結胚移植を進めるところが多いような感じがしていた。それもこのようなメリットがあるからだろう。
また新鮮胚移植をすすめるクリニックでも、一回目の移植は新鮮胚移植、受精卵が複数ある場合は、残りを凍結保存し、後日、凍結胚移植を行うなどのパターンもある。
今回ここに書いたことは、きっとクリニックのコンサルを受ける際に、すべて説明してくれると思うが、その下準備としてこれらの基本的な知識があると、話が聞きやすいと思い記事にした。
高度生殖補助医療は、日々進化を遂げているようで、今後さらにあたらしい医療技術などが導入されていくのかもしれない。ここに書かれていることだけを鵜呑みにせずに、ぜひドクターの話をよく聞き、ご自身にあった選択をしていただければと思う。
参考資料
Fresh vs. Frozen Embryo Transfer – Which is More Successful?
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