第27話 彼女たちが代理母になりたかった、3つの理由。代理母になるひとたちのこと②

第27話 彼女たちが代理母になりたかった、3つの理由。代理母になるひとたちのこと②

 

 


 

 

さて、前回からお伝えしている、代理母になるひとたちのこと。代理母出産の話題をするにあたって、一番大切な存在のひとつだと言っても良いのに、なかなかその姿が見えにくいのが、代理母になる女性の話だろう。

 

僕らのサロガシーの旅は、この時期代理母さんとのマッチングを控えている頃だった。そのエピソードをご紹介する前に、ここで代理母になるひとはどんなひとなのかということをお伝えしておきたかった。

 

前回の、”第27話 代理母になるひとたちのこと① 〜その要件とプロセス〜”に続き、今回は代理母になりたい人たちの動機についてお伝えしていきたいと思う。

 

 

 

 

 


 

代理母になりたいその動機

 

これは、代理母を実際に経験した人たちが、その体験を基に語った動画を見たりブログなどを読んで得た情報を、ここでまとめてみた。ここでは僕の個人的な印象として、彼らの具体的なバックグラウンドは違えど、次のような流れが、代理母になりたい動機につながっている人が多いような気がする。

 

 

 

1. 妊娠している状態が好き・出産経験にいい思い出があるから

 

こういった気持ちは最初僕にはピンとこなかった。僕自身、自らが妊娠・出産はできない体であるし、今後もそれはできない。だから人から聞いた話しでしかないが、妊娠・出産と聞くと、つわりやお腹が大きい状態での生活、そして出産の痛みなど、『大変な努力』が常に強調されることが多いことも、それがピンとこない理由のひとつだったかもしれない。

 

しかし、周りに妊娠・出産を経験した女性は代理母じゃなくてもたくさんいる。自分の周りにもいたのだが、その中には、妊娠・出産によってしか得られない『幸福感』があり、その『幸福感』がそれと同時に起こる『大変な努力』を帳消しにしてしまうぐらいに大きく上回る、という人が少なくない。

 

それとは反対につわりがひどかったり、ひどい難産で何十時間も苦しんだり、産褥の状態が悪く、『二度としたくない』と思う人もいるようだが、きっとそういう人は代理母になろうとも微塵とも思わないだろう。

 

代理母になるには前回書いたように、経産婦(出産経験のある女性)であることがその要件のひとつだが、その中には、これ以上子どもを持つつもりがないが、その経験がまたできるのであれば、ということで、代理母になることを考え始めるひとは、僕が見聞きした中では多かった。

 

 

 

2. 自分が喜べることで、他人の役にたつのなら。

 

上に書いたように、妊娠している状態が好きだけれど、それによって子どもを授かれない人のため役にたつのなら、というのがその動機として次のステップになることが多いようだ。

 

自らが子どもと過ごす今の生活を幸せだと感じていて、それと同じように子どもが欲しくても持てない人が、それと同じ経験をするための助けになるのなら、という考えでもある。

 

中にはその宗教的思想から、人助けをしたいという代理母候補者もいるようだ。少々蛇足にはなるが、そういった代理母候補者は、IPも同じ信仰のあるひとを求めることがあるそうで、実際、僕らのマッチングの際にも、エージェンシーのコーディネーターから、僕らはその宗教の信仰があるかと聞かれたりもした。

 

 

 

3. 無補償ではないということ。

 

以前サロガシーに関する世界的な動向を、BBCの記事を参考にして書いたことがあるが、世界には商業的サロガシーが実施されている国と、利他的サロガシー(金銭の授受ををともなわないサロガシー)が実施されている国とがある。

 

商業的サロガシーと聞いた多くの人が、代理母になる人がその多額の補償額だけを目当てに、仕事として行っていると考える人は多いと思う。しかし、実際の補償額はそんなに高くない。

 

僕らのケースに関しては守秘義務があるので、ここでその金額を出すわけにはいかないが、実際にアメリカで代理母をしていた女性がそれについて語った質問集、代理母だけどなんか質問ある?をここで紹介したいと思う。(元サイト、英語版はこちら)彼女はそこで、自らの補償額を明らかにしているが、彼女の場合、その補償は約2万ドルだったということだ。

 

過去に、サロガシーを行っていた一部のアジア諸国などにおいては、その土地の物価や平均賃金などと比較すると、その補償額は莫大なものになったかもしれない。しかし、アメリカで経済的に自立している女性に払う補償額にしては、その金額は特別大きいものではないように感じる。(代理母になる要件として公的補助を受けているひとはなれない→くわしくはこちら

 

しかし、利他的サロガシーが合法であるイギリスなどにおいては、代理母を探す際にそのなり手がなかなか見つからないというのも現実としてあるようだ。それは代理母を探す際に広告・宣伝などを出すことも禁止されているのも理由としてあるが、無補償であることはやはり大きい理由のひとつではないかと、個人的には考えている。

 

 

 


 

彼女らの動機を知ってこの時期感じたこと

 

2回にわたってお伝えした代理母になる女性についてのこと、今回はその一般的な概要をお伝えした。

 

もしかしたらこれを読んでくださったあなたの中で、「そうはいってもやっぱりお金が一番の目的なんだろう」と思う人もいるかもしれない。最初のふたつの理由はタテマエだと。

 

そう思ってしまうのもしかたないのかもしれない。依頼した僕自身ですら、そう勘ぐっていたところが正直あった。

 

しかし、僕らが実際に代理母さんに出会い、出産にいたるまでの長い時間を共に歩く中で、彼女をさらに知っていき、ここに書いたような動機がタテマエではなかった、ということがその経験からわかっていった。それは出産から一年経った今も続く、彼女と彼女の家族との交流からも感じていることでもある。

 

今後さらにサロガシーの旅をご紹介するにつれ、僕らの代理母さんについてもプライバシーに配慮した範囲、守秘義務に触れない範囲で書いていくつもりだ。代理母さんについて書いたこの二回、それだけではなく、今後の僕らの旅もぜひ続けて読んでいただき、いろいろと参考にしていただけたらと思う。

 


つづきはこちら

第28話 代理母さんどう選ぶ? カタログとかあるの?


連載「サロガシーの旅」が書籍化されました!

ブログでは第1、2章までが公開されていますが、残り半分の旅路も全てあわせて収録されています。

全国の書店、またはamazonでお買い求めください!