代理母出産にまつわる噂でよく聞かれるのが、代理母がならんでいるカタログのようなものがあるのかということ。商業的サロガシーという言葉の響きから、まるで商品を選ぶようなイメージからきっとくるものだろう。
先に種明かしをすると、そういったカタログ的なものは存在しなかった。
ではどのようにIPである僕らと代理母さんがマッチング(matching)されたのか、今回はそれをお伝えしたい。
お見合い的なマッチング
これは、読んでいる方の年齢層にもよるだろうが、一昔前にはよく近所にお見合いおばさん的な世話好きな人がいて、お見合い話を持ってくる人がいた記憶があるかたもいるだろう。
「あそこの坊ちゃんと、どこそこのお嬢さん、ちょうど年頃もいいし、性格もぴったりじゃないかしら?」
といった感じで、双方を知るお見合いおばさんが、その年の功で相性がいいんじゃないかというふたりをお見合いに導くという感じ。
代理母さんとのマッチングは、そういった『お見合い』に近いプロセスだった。英語圏では、ブラインドデートと言うらしく、僕らが利用したエージェンシーではその言葉を例えとして使っていた。
以前、第15話で、インテンディッド・ペアレンツ・プロファイル(IPプロファイル)というものを記入・作成したことをお伝えした。それは僕らIPの自己紹介のような書類だ。そして第27話でお伝えしたとおり、代理母候補である女性も、同じように自身のプロフィールを作成している。
僕らのエージェンシーではマッチングに関してのチームがあり、担当者がそれらのプロフィールを把握し、それをもとに相性の良さそうなIPと代理母候補の女性を引き合わせる段取りをつける。
マッチングの流れ
マッチングの流れはこのようになる。
- 担当者を通じ、お互いのプロフィールを交換、書面で確認。
- 双方が気に入れば、スカイプでの面談(一時間ほど)
- 双方が気に入れば、マッチング成立。
マッチングチームの担当者は、各プロフィールから、お互いのサロガシーのプロセスに関する意向が一致、または近いひとを探し、このIPと代理母であれば合いそうだというところを見分ける。
また、代理母候補の女性もいろいろと希望を出していて、国内の人がいいとか、IVFクリニックはできるだけ州をまたがないところがいいとか、また、宗教的価値観が合う人がいいなどといった観点も、マッチングを手助けする材料になるようだ。
その後、互いのプロフィールは担当者を介し交換される。
名前はファーストネームのみで、名字や具体的な住所、電話番号、メールアドレスなど、個人が特定できるような部分は除かれていたりするが、家族構成や育った家庭についてなどの略歴は書かれている。それには、サイコロジカルスクリーニングの報告書も添付されており、専門家が代理母として的確であるという判断をした旨が記された書類もIPに送られる。
その後、代理母候補の女性、そしてIPの双方が気に入れば、お見合い – すなわちスカイプでの面談に進むことになる。その際も、すべてマッチング担当者を介し、スカイプのアドレスのみが互いに交換され、スケジュール調整の段取りもしてもらう。
スケジュールが決まったら、その日時にスカイプをつなぎ、お互いに話をする。この段になって、エージェンシーの担当者は「あとは若いおふたりで。。。」的に姿が見えなくなり、そのスカイプ面談には立ち会わない。
お見合いが終わると、双方が担当者にその気持ちをつたえ、ともにいい印象を持てば、マッチングが成立、次のステップへと進むことになる。もしどちらか一方でも気がすすまなければ、また他のひとを担当者が探し、同じプロセスを踏むことになる。
ここまでが、マッチングプロセスの流れ・概要となる。
エージェンシーにうけたアドバイス
マッチングに向かう時期になると、エージェンシーからは、マッチングに関しての資料が結構な量で送られてきていた。また、エージェンシーのサイトのブログなども読むように言われていた。それらにはそのマッチングの流れや、概要なんかが書かれていたし、そのマッチングの前にはプログラムコーディネータとスカイプで相談もし、アドバイスも受けていた。
全てをここでは書かないが、一番印象的だったのは、次のことだった。
『まずは相手を知ろうとすることが大切。普段の生活のことだったり、趣味や空いた時間に何をしているか、家族のことなど、相手に興味を持っていろいろと質問をしてみること。』
ここから先、共にこのサロガシーの旅を歩んでくれる人を探すためのマッチング。ここで僕らが選んで、あとは「ハイ、まかせたよ、よろしく。」っていうわけじゃない。この人と一年ほどのプロセスをともにやっていけるか、馬が合うかというのは重要なようだった。
また、その候補の方が代理母に適しているかそうでないかは僕らが判断せずとも、すでに専門家や医師がスクリーニングを済ませているので、そういった技術的なことは聞く必要がない。相手といい関係が築けるだろうかということに集中することが大事だったのは、のちのちの旅の行程が進むにつれ、実感したことでもあった。
僕らが選ぶだけじゃない、彼女にも選ぶ・断る権利がある
これはとても大事なことだと個人的には思うのだが、このマッチングにおいて、IPは依頼側だからといって、一方的に選ぶ側、というわけではない。代理母候補の女性も、IPを選ぶ権利がもちろんあるのだ。
上に書いたようなアドバイスは同じものを代理母候補の女性も読んでいるようだったし、彼女らのプロセスもIPである僕らと同じような段階を踏んでいる。プロフィールを読んだ時点や、スカイプのときに気に入らなければ、彼女らがそのIPを断る権利があるということだ。
子どもが欲しいというIPと、それを助けたいという代理母候補の女性。双方の思いが一致し、最終的には子どもを授かるという、たった一つの目的に向かっていくサロガシーの旅。
依頼側であるIPが一方的に何かを進めるということはこのサロガシーの旅ではできない。そこに向かって一緒に協力しあっていく人を探す。それは、このマッチングの時点から始まっている。
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