理解しておくべき3種類の保険
前回は代理母さんとの取り決めを書面にする、同意書作りについてお伝えしたが、それと同時進行で検討したのが、サロガシーのプロセスにおいて必要となる保険についてのことだ。アメリカでの診療は自由診療が基本であり、基本的には全てIPがその保険料や診療費を負担することになっているが、そのサロガシーのプロセスにおいて知っておきたい三種類の保険、
- 健康保険(Health Insurance)
- 生命保険(Life Insurance)
- 生まれてくる子どもへの保険について
について、今日はお伝えしたい。
健康保険(Health Insurance)
アメリカの診療は自由診療が基本であり、代理母候補の方は民間の保険会社と契約する健康保険に加入していることが多い。サロガシーのプロセスでかかる医療費というのは、大きくわけて次のふたつになるのだが、その代理母さんが加入している健康保険でカバーできるものとできないものとある。ここではそのふたつをわけて見ていきたい。
IVF(体外受精)の診療に関わる保険
サロガシーのプロセスでは、IVFをうけるクリニックへ支払うその基本の診療費は全額負担になるとのことだった。ただし、その過程でなにか想定外の事態が起きた場合、それに必要となる治療費をカバーするための保険には加入することになる。僕らの場合、エージェンシーがその手筈を全て整えてくれたので、彼らを通じてその僕らが保険料などを支払った。
妊娠中の検診や、出産に関わる保険
IVFがうまくいき妊娠が10週目ごろになると、IVFクリニックはそこで役目を終え、代理母さんは地元の産婦人科医(OBGYN/オブジン)注¹ に移ることになるのだが、先にも書いた通り、彼女が健康保険に入っていれば、その妊娠と出産にかかる費用はその保険が適用され、その全額から適用分が差し引かれた額を、IPが負担することになる。その健康保険の契約内容によって、その適用範囲が違う場合があるようだが、その点についてはエージェンシーが把握しているはずなので、彼らに確認することとなる。
僕らの代理母さんの場合、すでに健康保険に加入済みで、その契約内容には生まれてくる子どもに対しても、その妊娠中から生後その病院を退院するまでの診療費が適用されるとのことだった。ただ、その適用範囲もその保険によって違いがあるようで、子どもが未熟児だったり何か問題がみられる場合に利用するNICU(新生児集中治療室)での治療が必要になった場合などにも適用されるかなど、確認しておいたほうがいい。
生命保険(Life Insurance)
すべてのサロガシーエージェンシーでそうなのかは僕にはわからないが、僕らのエージェンシーではその費用の中に代理母さんのための生命保険代が最初から含まれていた。それは代理母さんへの保障のひとつとして必要要件であった。
アメリカでの妊産婦の死亡率は10万人のうち14人(0.014%) だというデータ(2015年, 出典:世界銀行)だということだ。しかし、自然妊娠よりもむしろ多くの検査や心理的ケアなどのサポート体制をうけることができるサロガシーにおいては、そのリスクはそこからさらに低くなるだろうと個人的には考えている。(その統計は特にないようだが)
生命保険のことを聞き、最悪のケースについて考えるのは正直怖いことではあった。しかし、サロガシーは医療行為であり、またその特性上、様々なケースを想定し、代理母さんとともにそのリスクも正しく理解したうえで、サロガシーの旅をすすめることは、大切なことだと理解していった。
生まれてくる子どもへの保険について
生まれてくる子どもの保険については、先にも少し書いたが、代理母さんの加入していた保険で退院時までの検診などの費用はカバーされるとのことだった。
しかし僕らが出産後に気づいたことで、この時期に確認しておくべきだったということをここにひとつ書いておきたい。
子どもが無事に生まれ退院した後も、近くの小児科医などで検診をうけることができるのだが、その子が生まれた病院を退院すると、もうそれは代理母さんの保険は適用されず、実費となった。僕らの場合、アメリカ滞在中3回ほど検診のために小児科医に通ったが、その実費はおそらく保険代をはらうよりは安くなったと思われるのでそれはよかった。
しかし、もしその生まれた子が退院したあとになにかあり、その治療のため手術や入院が伴っていたとしたら、莫大な治療費がのちにかかる可能性があったわけで、もしこの時期の自分にアドバイスするとしたら、その点をエージェンシーに確認をしておくといいかもしれないと思った。
僕らのサロガシーの旅では、このように子どもの保険に関しては調べが至らない部分があったと感じていたが、つい最近になって、知り得た子どもの保険に関する情報を、次回、お伝えする予定だ。
注¹ OB/GYN オブジン = 産婦人科医: (OB = obstetrician = 産科医、GYN = gynecologist = 婦人科医)