ゲイだって子どもを持って育てることできる
僕らがロンドンに引っ越してから1年が経とうとしていた2012年頃、実際にどうしたら子どもを持つことができるのかを調べ始めていた。
僕らは結局サロガシーを選んだのだが、その過程で他の選択肢について考えることもとても重要だった。たくさんの選択肢があれば、自分たちに合った方法というのを選ぶことができるというものだ。
僕らが住んでいるここ、イギリスのNHS(国民保健サービス)のホームページではLGBTが子どもを持つ方法を大きく4つにわけて紹介している。子どもを持ちたいと考え始めた人にはとてもわかりやすいものだったので、今日はそれを参考にLGBTが子どもを授かる可能性についてお話ししたい。
今はまだ、日本じゃ無理なこともあるかもしれないけれど、今後LGBTの権利がもっと認められるだろう将来のために、イギリスではこうですよというご紹介の意味を込めて、書いていきたいと思う。
1. 養子縁組 (アダプション)
養子に関してはここイギリス(イングランドとウェールズ)では2005年から、同性カップルも異性カップルと同じように、子どもを引き取ることができるようになっている。養子を取る場合、エージェンシー(官民両方ある)を介し行われなければならない。
その条件とは、21歳以上であり、かつ…
- 独身
- 既婚者
- シヴィルパートナー
- 結婚していないカップル (同性間・異性間問わず)
- その子どもの親のパートナー
*出典元 https://www.gov.uk/child-adoption/overview
しかも、1年以上UKに住んでおり、持ち家があるのであれば、イギリス国民でなくとも養子を取れるそうだ。もしあなたも将来転勤などでUKに来る可能性があれば、ありえる話かもしれない。そしてそのプロセスはざっくり言うと3段階にわけられる。
- エージェンシーに登録する、
- 審査:社会福祉士による面接、家庭訪問、経済状況の確認、
- 子どもを探すマッチング、そして数日間のトレーニングの後、子どもを迎え入れる
という流れになるそうだ。パートナーのいない人はいる人に比べ、審査が厳しくなるということ。パートナーがいる場合でも、それが結婚しているのか、シヴィル・パートナーシップなのかによっても、審査の基準や法的な申請の仕方、法的な親権の優先順位などが細かく変わってくる。審査やマッチングプロセスに時間がかかるのが当たり前で、それにたいしての忍耐強さを覚悟しておいた方がいいらしい。
追記 (2015-12-17)
実際にイギリスで養子をとる際、ゲイペアレンツであることは特に問題にはならない。最新の報告はこちら。
イングランド、同性カップルの養子縁組増加―12組の1組は同性カップルに!
2007年に記録が開始された当時、1年間に養子として取られる子どもたちは、イングランド、スコットランド、ウェールズの3地域を合わせても90人だったが、今年は497人にまで増加している。
(出典: LETIBEE LIFE)
2. 共同養育(コー・ペアレンツ)
コー・ペアレンツ とは、もとは“離婚後も子どもを共同で養育する親“という意味。つまりリレーションシップが無い人間同士でこどもを養育するという既存の制度を、LGBTが利用するようになったようだ。
例えば、友達同士のレズビアンとゲイとか、ゲイとその友達のストレートの女性など、またはゲイから精子提供を受けたレズビアンカップルの3人で、子どもを育てることなどもある。ある一定の定義にあてはめにくいが、基本的にはリレーションシップにない人の間で行われる養育方法。
これは、その各ケースによってどの法律が適用されるのかが微妙に違い、それら法律的な問題も含め権利などが複雑化するが、基本的には実際に妊娠し出産した女性(実母)がまずは確実に親権があり、その他の人間は出産前に法的な手続き(親権の獲得や、実母になにかあった場合の保護者が誰になるかなど)を行わなければならない。また、養育費の負担の割合や、役割(誰が子と同居するのかなど)などの取り決めも必要となる。
3. 精子提供 (ドナー・インセミネーション)
これはその名の通り、男性が女性に精子を提供し、人工授精により妊娠する方法。前述のコーペアレンツで説明したように、手続きを取らなければ親権は得られないので、男性の場合、親になる方法というよりは、遺伝子を残す方法と言えるかもしれない。また女性、レズビアンの方にとっては提供を受ける側として身近に感じられる方法だろう。日本にもすでにこの方法で子どもを授かっている人もいる。
NHSでは、自宅にてスポイトやシリンジで自ら行う人工授精も可能だが、ライセンスのある病院(不妊治療クリニック)で行うことを勧めている。それらの病院だと、精子の検査を行い、STD(性行為感染症)を含め健康状態のチェックができるとともに、法的なアドバイスもしてもらえるからだ。
親権については、ここイギリスでは最近法律が変わり、人工授精時にすでにシヴィルパートナーを結んでいる、もしくは結婚しているレズビアンカップルの場合、妊娠した女性のパートナーも自動的に親権を得られるようになった。しかしそうでなければ、のちにアダプションの申請をしなければ親権は得られない。
4. 代理母出産 (サロガシー)
サロガシー(代理母出産)は、LGBTの中でも、自身で妊娠ができない男性にとって可能性の高いオプションの一つになると思う。
サロガシーとは、子どもが欲しくてもなんらかの理由で自ら妊娠できない人が、代わりに妊娠してくれる代理母に依頼し、体外受精(人工授精の場合もある)させた受精卵を代理母の子宮に着床させ、妊娠出産までを行ってもらうということだ。
イギリスにおけるサロガシーは法律で認められており、不妊治療のひとつとしてIVF(体外受精)とともに受ける事はできる。しかし商業的なサロガシーは認められていないので、代理母には”適切な出費”以外はお金を渡すことは禁じられていおり、ボランティアで引き受けてくれる人を探さなければならない。
また、もし代理母が産まれた子どもの引き渡しを拒否した場合、それを止める術はない(法律上、分娩した女性の親権が一番強い)。そして、サロガシーのための広告・宣伝なども禁止されている。
以上のようなことから、ここイギリスでサロガシーを行うのは非常に稀ということだが、全くないわけではない。COTSという非営利の団体がエージェンシーをしており、ゲイカップルもそこを通じて子どもを授かっているようだ。
サロガシーはいまだに、倫理、法律、親権、子どもの権利、宗教などさまざまな要素において議論が交わされている。また、世界におけるサロガシーの状況は国によって随分と差があることも、調べていくうちにわかってきた。その違いについてはこちらをご覧いただきたい。
まとめ
今回は4つのオプション、
- 養子縁組 (アダプション)
- 共同養育 (コー・ペアレンツ)
- 精子提供 (ドナー・インセミネーション)
- 代理母出産 (サロガシー)
をご紹介したが、その選択肢のなかからどれを選ぶかはあなたの生活スタイルや人生設計によるもので、どれが一番いいとか悪いとかという話ではない。
リカと僕はカップルとしてふたりで子どもを育てていきたいというのはわかっていたので、1.養子をとるか、4.サロガシーをするかのどちらかに、はじめから選択肢が絞られていた。そのプロセスにおいては、少しずつご紹介していくが、このふたつから選ぶにあたり、それらの違いを比較して、自分たちの選択をするのにはもう少しサロガシーについて知っていく必要がありそうだった。
来週はサロガシーについて、もう少しだけ詳しくお話しする予定だ。
画像出典: Baby Putty by Brenna via Flickr, Licensed under CC BY-NC-ND 2.0
つづきはこちら
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