サロガシー・エージェンシーとは
サロガシーをしようとするときに、人工授精型のトラディショナル・サロガシーではなく、体外受精(IVF)を伴うジェステイショナル・サロガシーを行うのであれば、不妊治療クリニック(Fertility Clinic)などの医療機関で行うことになる。
実際、自分自身で病院にコンタクトをとり、IVF(体外受精)を受けることは可能ではあるのだが、代理母や卵子提供者を探したり、それに伴う法的手続きを行うこと全てを、自分たちだけで行うのは、不可能に近い。
そこで、それらの仕事を一手に引き受けてくれる業者が、サロガシー・エージェンシーだ。彼らが行ってくれるのは簡単にまとめると次のようなこと。
- 担当のコーディネータが契約から出産までの全体を把握し、手続きの補助やコーディネートをする
- 社会福祉士によるカウンセリング・スクリーニング(依頼者の適格審査、サポート)
- 代理母、卵子提供者の紹介・斡旋
- 生殖補助医療専門の弁護士による、契約書などの作成
- 依頼者の親権や、子どものパスポートの手配など(国際的サロガシーの場合)の法的手続き
- 代理母や卵子提供者と契約の際、間に入って交渉してくれる法定代理人を用意してくれる
- 病院の紹介
これらはあくまでひとつの例であり、エージェンシーによって行っている業務は異なる。なので、エージェンシーを探す時はそれぞれの違いを把握し、どこが自分たちの状況にあっているかを見つける必要があると思う。
エージェンシーを探すときに、ネットを使って探し、メールやスカイプなどで質問したりすることになると思うのだが、実際調べ始めると、膨大な数のエージェンシーが出てきて、何を基準に選べばいのか見当もつかなかった。
そのプロセスを半分以上過ぎ、いまだからこそ振り返ることもできた。ここからは、エージェンシーを選ぶときに僕らが気をつけたことを8つの項目に分けてご紹介したいと思う。
エージェンシー選び、8つのポイント
ネットで “Surrogacy agency in US” と検索をかけると、たくさんのエージェンシーがでてくる。どこも同じように見えるのだが、実際にはいろいろと違いがあるようだ。
そこで今日は、こちらのサイトを合わせてご紹介したい。このサイトは僕らがリサーチをした後になって見つけたものなのだが、Surrogacy Adviser という、実際にサロガシーをした人たちから集めたアンケートを元に、サロガシー・エージェンシーやクリニックを評価、データ化したものだ。ちなみにこのサイトは、あくまでアンケートに答えた人の数でしかないので、実際の数はエージェンシーのサイトを見るか、直接質問をすることが大切だ。
依頼者の主観を基にしたアンケート・レビューなので、全てを鵜呑みにするわけにはいかないが、数あるエージェンシーのサイトをむやみやたらと歩き回るより、比較検討するのに見やすいサイトとなっている。また、一部アメリカ以外のエージェンシーも含まれているようだ。
エージェンシーの比較検討をする際には、
- 各エージェンシーのサイトやブログを読む
- エージェンシーが行っている無料でのコンサルテーション(スカイプやメールなど)で質問する
- Surrogacy Adviser のようなまとめサイトを利用する
などの方法があるが、そういった時に、チェックしておきたいポイントの8項目をご紹介していこう。
1.過去の依頼者に自分と同じ国籍・在住国のケースがあったか?
スクリーンショット: Surrogacy Adviser より
ほとんどのエージェンシーでは海外からの依頼 – International Surrogacy を行っているが、その経験が豊富かどうか、また自分が住んでいる国からの依頼者が過去にいたかというのは重要だ。
彼らはアメリカのエージェンシー、実際にあなたが住んでいる国や国籍の法律のエキスパートではないので、それについて全てのことを知っているわけではない。しかし、過去の依頼者からなにか学んでいれば、子どもを自国へ連れ帰る時や、法的手続きへの知識があるかもしれない。
残念ながら、日本国籍・日本在住のゲイ(カップルの片方のみでも)の依頼者がいたエージェンシーはひとつも見つからなかったが、僕らはロンドンの弁護士事務所とも提携しているというエージェンシーを見つけた。そのエージェンシーは何組もの依頼をイギリス在住のカップルから受け、子どもが誕生しているということだったので、僕らにとって助かると思った。
2. ゲイフレンドリーか?
スクリーンショット: Surrogacy Adviser より
サロガシーという特性上、異性間カップルだけでなく、ゲイカップルが利用を考えるのは多いと思う。そして実際、ほとんどのエージェンシーがゲイフレンドリーだ。なのであまり『自分たちゲイカップルだけど大丈夫かな?』みたいな心配は全く必要ない。
各エージェンシーのサイトを覗くと、そこを利用した人たちの手記を載せているところが多い。ゲイカップルの手記を読んでみると、自分たちの状況に重ね合わせ、想像がしやすく、選択の基準にもなるかもしれない。
またその会社の設立者がゲイであるということを公表しているところもあったりするので、そういう点も参考になるだろう。
また先述の比較サイトをみると、上の画像のように依頼者の中でLGBTとストレートの割合を示しているので、ゲイカップルの経験が多いところをお望みなら、それが参考になるかもしれない。
3. Law Firm (弁護士事務所)かどうか?
スクリーンショット: Surrogacy Adviser より
Law Firm というのは弁護士事務所という意味だ。先の比較サイトをみると、そこにチェックが付いているところとそうでないところとある(上記画像参考)。サロガシー・エージェンシーというのは、多くの場合が、生殖補助医療専門の弁護士事務所として立ち上がってきた歴史があるということだが、マッチングに特化しているエージェンシーもあり、割とそこは費用が安いようだ。
もちろん費用は抑えたいところだが、安いからといって依頼しても、専門の弁護士がいないと、結局他に弁護士を雇わなくてはならず、費用が予想より大幅にかかってしまう可能性もあるかもしれない。
4. 卵子提供をしているか?
Egg donation? という項目がLaw Firmの上にあるのだが、そこは卵子提供を行っているかというところだ。
もし卵子提供を自分の家族などにお願いする場合は必要ないのだが、そうではないゲイカップルの場合、卵子提供を受ける必要がある。自分たちは卵子提供が必要かどうかを、予め相談しておくことが大切だ。
もちろんエージェンシーに頼まずに、自ら卵子バンクに連絡をとったり、のちに依頼するIVFクリニックが卵子提供者を紹介してくれる場合もある。ちなみに僕らが選んだエージェンシーは、卵子提供者を紹介できるところだった。
5. 費用の差とプログラムの差
コストについてだが、それはエージェンシーごとにどんなプログラムを行っているかによって差が出てくる。
前述のLaw Firm かどうかによっても違うし、同じエージェンシーの中でも、卵子提供者や代理母を(家族や友人などに依頼し)自ら用意するのか、それともエージェンシーに探してもらうのかによっても、金額が変わってくる。
また、アメリカは自由診療が基本であり、日本のような国民皆保険システムではないため、代理母が自らの保険を使用しそれが妊娠・出産の際に利用できるかによっても違ってくる。もし、依頼者が代理母の保険をカバーしなければならない場合は、その費用も必要になる。
また、各サイトに費用の概要は乗っているが、それはあくまで目安でしかない。各エージェンシに質問する機会があるなら、その提示している金額でサービス内容は何が含まれているかを確認したほうがいい。
6. 代理母をどのように募集・審査しているか?
第11話でお伝えしたように、アメリカにおける代理母になる資格というのは、はっきりと法律で決められているわけではないが、各エージェンシーごとに資格や条件(Requirements)を設定している。
それぞれのエージェンシーのサイトに行くと、代理母(surrogate mother)の募集をしているページがあり、資格や条件の一覧があったり、代理母になりたい人のためのQ&A的なページがある。それを各エージェンシーごとに比べていくと、その条件に多少ばらつきがある。
また、実際に契約前のコンサルテーション(相談会)で、エージェンシーの人にどのような審査が行われているかを直接聞くこともいいと思う。(僕らが相談会でどのようなことを聞いたかなどは、第14話でお話する予定です。)
個人的な感想だが、代理母になる資格が厳しいところのほうが、依頼者側からすると信頼できる。なぜなら、お金に困っている人に代理母をやらせるようなエージェンシーにはお願いしたくないからだ。(どのようにアメリカのエージェンシーが代理母の権利を補償しているかについてはこちらからどうぞ)
7. 大事なのはエージェンシーの所在地ではなく、病院と代理母の所在地
僕らはロンドンに住んでいるので、大西洋を挟んだ東海岸のほうが渡航に便利だと思い、東海岸にオフィスがあるエージェンシーに重点をおいて検討していたのだが、今になってみると実際にはあまり関係なかったなとも思う。
あくまで僕らのエージェンシーの場合だが、契約して以降、彼らのオフィスに行くことは皆無だからだ。全てのやりとりはメールとスカイプで行われている。もちろん他のエージェンシーは直接面接が必須なところがある可能性はあるのかもしれないのだが。
もちろん実際にアメリカに渡航する機会はあるのだが、それはIVFクリニックと、代理母に会いに行くときだ。そしてエージェンシーとIVFクリニック、代理母の三者が全く別の州の所在であることは珍しくない。
Surrogacy Adviser のリストを見ると、各エージェンシーがよく使う病院が合わせて載っていたりする。そこの所在地をチェックしておくのは参考になる。
また、直接エージェンシーと話す機会があれば、待機している代理母はどのあたりに住んでいる人が多いのか、利用するIVFクリニックはどのあたりなのかを聞くことをお勧めする。
8. エージェンシーの設立年と、そこで生まれた子どもの数は?
僕らが選んだエージェンシーは、設立して20年ほど、数多くのサロガシーを取り扱ってきたところだ。もちろんただ長ければいい、というわけではないが、僕らは大切なポイントだと思っていた。
アメリカにおけるサロガシーの歴史は30年以上と長いのだが、全てのエージェンシーがそれと同じだけの歴史があるわけではない。長いところもあれば短いところもある。
代理母出産 – サロガシーというのは依頼する人、代理母の状況など、さまざまな要因によってその行程は千差万別、十人十色。簡単に毎回同じように繰り返すというわけにはいかない。だからこそたくさんのケースを取り扱ってきた経験豊富なところを選びたいと思っていた。
エージェンシーのサイトに行くと、そのエージェンシーを通じ何人の赤ちゃんが生まれきたか、またその成功率が、公表されているところもある。それを参考にしない手はない。
まとめ
1.過去の依頼者に自分と同じ国籍・在住国のケースがあったか?
2. ゲイフレンドリーか?
3. Law Firm (弁護士事務所)かどうか?
4. 卵子提供をしているか?
5. 費用の差とサービスの差
6. 代理母をどのように募集・審査しているか?
7. 大事なのはエージェンシーの所在地ではなく、病院と代理母の所在地
8. エージェンシーの設立年と、そこで生まれた子どもの数は?
と、僕らがエージェンシーを選ぶ際に、注目していた8項目をご紹介したが、僕らも最初からこの8項目がわかっていたわけではない。あとになって振り返ってみると、こうしてたなっていうことだ。
これが、あなたの旅に当てはまるかはわからないが、はじめの一歩として、ひとつの参考になればと思っている。そしてもしかしたらあなたはあなたの◯項目ができるかもしれない。
僕らはたくさんあるアメリカのエージェンシーの中から、3つほどまで絞っていったのだが、その中のひとつが、ロンドン市内で相談会を開くという情報を見つけた。それは肩肘張った会議のようなものではなく、実際にそのエージェンシーに依頼してサロガシーを行い子どもを授かった人がきて、話が聞けるという。彼らもUKに住んでいるゲイペアレンツだ。
そう、実際にふたりパパに会えるのだ。
リカと僕はちょうどいいタイミングじゃないかと、早速参加しようと決めた。それは2014年1月のことだった。
僕らが親になるための道。いままではリサーチばかりでパソコンとにらめっこするだけだったが、いよいよ行動に移るときだ。なんだか心のワクワク感は、新しい冒険に出るような気持ちだった。
画像出典:スクリーンショット: Surrogacy Adviser より
つづきはこちら
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