ということで過去三回に渡って、代理母になる女性についてや、マッチングのプロセスについてお伝えしてきた。
それを踏まえ、今回は僕らの息子くんを、自らのお腹の中で育み産んでくれた、代理母さんとの出会いをお伝えしたいと思う。
まずはプロフィールをチェック。
第28話でお伝えしたように、マッチングにあたりエージェンシーの担当者から、あるひとりの女性のプロフィールと、適性検査の結果をEメールで受け取った。リカと僕はまずそれぞれ別にそれらの資料に目を通すことにした。
確かにそこに書かれている彼女のサロガシーの意向・見解は僕らのそれとほぼ一致していた。その部分はすでにエージェンシーのほうで僕らに合う人をあらかじめ探して引き合わせてくれたようだ。
個人的に驚いたのは、その彼女のプロフィールの細かさだ。特定の個人につながる名字や具体的な住所、電話番号、メールアドレスなどは伏せられていたが、まるで彼女の伝記といっても過言ではないほどのことが書かれていた。生まれ育った家庭とその家族との関係、学生時代の話、そして大人になって子どもを持ち、今の家庭環境にいたるまで事細かに書れていた。
そして、その正直さというか、ありのままというか、オープンにしてくれているそのプロフィールは好感のもてるものだった。
そして、逆に僕らの紹介文も、彼女が今読んでいるということだった。
その後、リカとも相談し、「よさそうだね、会ってみよう」ということになった。そして、エージェンシーにその旨を伝えた。
スカイプコールの前の準備
ありがたいことに、僕らのプロフィールを読んだ先方も、僕らのプロフィールを気に入ってくれたようで、早速スカイプで会ってみることになった。エージェンシーの担当者を通じ、お互いの都合のいい日時をすりあわせ、スカイプIDを交換した。
いざ、その日、その時間が近づくと、なかなか緊張してきた。
それまでの間に、リカとどんなことを話そうか、なんて相談したりして、あらかじめ質問したいことを書き出してみた。しかし、エージェンシーに受けていたアドバイスのこともあり、それらの質問が尋問するようなものになっていないかなど、自分たちで読み返したりしていた。
またそれらは質問項目というよりも、「次なにしゃべろう。。。」といって変な間ができてしまわないように、趣味だったり家族のことだったり、自然に会話が広がるような、ネタというかトピックみたいなものをメモしたものだった。
他に準備したことといえば、身なりを整え、スカイプの通話テストをし、バックにうつる部屋の片付けをして、何度も待ち合わせの時間を時差の計算も含め、確認したりしたことぐらいだ。
スカイプコール、ど緊張の幕開け
そして迎えたスカイプコール。スカイプのチャットで、お互い準備はいいかどうかを確かめると、いよいよビデオ通話をつなげた。画面に映ったのは、代理母候補の方とそのパートナーの方だった。
まずはお互いに、名前をいうぐらいの軽い自己紹介をする。そしてどちらが先に言いだしたかは覚えていないが、もうそれはほぼ同時に、
「なんだか、すごい緊張しています」
というようなことをお互いに言った気がする。正直、リカも僕も喉がからからになるぐらい緊張していたのだが、それは、彼女も同じようだった。
お互いにサロガシーの旅は初体験。このマッチング自体も、いくらエージェンシーからアドバイスを受けたとしても、どんなものなのかわからなくって、手探りというか、なにをどこからしゃべっていいのやら、といった感じではあったのだが。
彼女が代理母になろうと思った理由
挨拶から始まり自己紹介も終えると、次第にリラックスし、少しずつ話の流れができてきたように思えた。お互いのパートナーとの馴れ初めや、今の生活、どんな仕事をしているかなども話した。実際にはそれらはすでに資料でも読んで知っていたことではあったが、直接話すことで、知り合っていく感覚がしていた。
とても話しやすく、明るく親しみやすい人だった。
そんな中、メモのなかにあった一つの項目として、一番聞きたかったことがあった。それはなぜ彼女は代理母になろうと思ったのかということだった。
どこまでのことを、どんなふうに聞いていいものなのか、ちょっと考えあぐねていたが、素直に聞いてみることにした。すると彼女も、とても気軽に教えてくれた。
数年前、彼女は子どもができなくて悩んでいる女性の親友がいたそうだ。自分は既に出産の経験がある彼女はその親友の不妊の相談に乗っていたそうだが、そんな中サロガシーのことを知り、「代理母になってもいい」と名乗りでたそうだ。
その時は、結局その友達は不妊治療がうまくいき、妊娠にいたったということで、サロガシーの話しはなくなったのだが、それ以来、『代理母になる』という可能性が頭のどこかに残っていたらしい。
自分も二人の子どもをもち、それがどんなに大変でも、かけがえのないその生活が幸せだと感じている。その生活を望んでも、できない人のためになるならと、サロガシーエージェンシーについて調べ始めたそうだ。彼女にとって、そこまでの決断はとても自然な流れだったと言っていた。
スカイプのあとに。
そしてそのスカイプが終わり、リカと僕はとても彼女と彼女のパートナーに好感が持てた。明るく溌剌としていて、それでいて落ち着いている、そんなカップルだった。
リカと僕は翌日になりエージェンシーのその旨を伝えると、すぐに返事がきて、彼女たちも同じように思ってくれているということだった。
マッチングの成立だ。
正直なところ、このときは、一度の面会のほぼ直感のようなもので、決めていいものかという迷いはあった。
しかし – これは後日談にはなってしまうが – 彼女との出会いから妊娠期・出産を経て、本当に素晴らしい人と出会えて、僕らはラッキーだということを、今は自信を持って言える。
経験値の高いエージェンシーが、マッチングの手助けをしてくれたことは、とても助かった。お互いの希望や意向をあらかじめ合う人を引き合わせてくれたのだ。僕らの場合、とてもそれがうまくいったと思う。そして、この時点では直感だけで決めたように感じてはいたが、今となってみると、それは直感だけではなかったのかなとすら思える。
それに、本当に大切なのは、ここから先マッチングのあと、いかにその代理母さんとの信頼関係を作っていくかということ。それはサロガシーの旅を終えた今だからこそ、言えることかもしれない。
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