こんにちは。ふたりぱぱのみっつんです。
最近、息子くんと一緒にテレビを見ることも多くなり、ここスウェーデンで流れている、このCMシリーズがちょっとお気に入りになっています。
『スウェーデンと言えば?』と聞けば”IKEA”と答える人が多いくらい、日本でもすっかりおなじみになったグローバル企業の家具量販店。そのお膝元、スウェーデンで流されているCMシリーズ “Där livet händer.” (その生活があるところに)が、とても印象に残るものばかり。
毎日の生活のなかにあるIKEA製品を見せるCMですが、現代スウェーデンの家庭が垣間見える、そんなシリーズなんじゃないかなぁと思い、ここでご紹介したいなと思いました。今日は全作品で7本あるうちの、3作品をご紹介します。
En god lyssnare (すばらしい聞き手)
階段をかけのぼる思春期の女の子。二階の部屋に入るなり鍵をかけて、お父さんになにか叫んでいます。お父さんは小さなスツール(腰掛け)に座って、ドア越しにそれをずっと聞いているところから始まります。
お気づきだったでしょうか? この1分の間に、季節は変わり娘さんの着る服は変わり、彼女は地下室に続く階段やバスルームなど、そんなところにも鍵あるんかい! と、突っ込みたくなるほど、いろんなところにこもります。しかし、お父さんはその娘の話をずっと聞いているだけ。最後のシーンで、ようやくお父さんが口を開き、それをきっかけに娘さんはその閉ざした鍵を開けるのです。
このCMシリーズはとくにセリフがはっきり聞こえるわけでもないし、その情況の説明があるわけではありません。でも、季節が移り変わるほどの期間が流れているこの中で、お母さんは出てきません。シングルファザーなのかなと思わせます。
シングルファザーと思春期の娘。大変な毎日かもしれません。流れるBGMもそういう気持ちにさせます。どこへでも持ち運べるIKEAのスツールは、そんなお父さんと一緒に、娘さんのやりきれない思いを、ずっと聞いてあげてるのかもしれません。
Komma hem (ようこそおうちへ)
はじまりはなぜかアジアの都市。タクシーの中には小さなクマのぬいぐるみを携えた一人の女性。彼女は神妙な面持ちで、とあるところを訪ねます。なにかの書類にサインをし、待合室のようなところでまったのち、ドアの向こうから顔をのぞかせたのは….
彼女はスウェーデンに住むシングルマザー。遠く離れた土地からこの男の子と養子縁組をしたようです。きっとこの日にいたるまで、様々な準備をしてきたのでしょう。まだ見ぬ彼に送るため、メッセージつきのフォトブックを作り自己紹介もしていたもよう。
スウェーデンに帰ってきて、彼を待っていたのは、カラフルな風船のランプと、ちっちゃな机セット、そして車輪付きのおもちゃ箱。そこに真っ先に向かっていったのかなぁなんて想像が膨らんじゃいます。
スウェーデンでは国際養子縁組は特別珍しいことではなく、僕らの親戚のなかでもいますし(その話はこちらから)、僕の友達の家族も3人兄弟を一気に縁組したという話も聞いたことがあります。全体から見たらそんなにたくさんいるカタチの家族ではないかもしれませんが。
しかし、だからこそ、こうやってCMにでてくることで、その認知度が高まり、その愛のカタチを知ることで『もらい子だ!』なんていじめられるケースはは少なくなるでしょう。日本では小さい時に養子縁組された子どもは、いまだにその事実を隠されたまま育てられたりするケースの方が多いのでしょうか?
Varannan vecka (一週間ごとに)
ひとりの男性が車でやってきた坂の途中の家、でてきたのは女性。この男女はなんだかきまずい挨拶を交わす。二階の子ども部屋でじっと座って待っていた男の子に、この女性は声をかけます。
『パパが来たわよ。』
日本のみなさんは、これを見て、『どういうこと?』と首をかしげるかたも多いかもしれません。なのでちょっと状況を説明。
この男女はどうやら別れたてのカップルで、この息子さんはこのタイトルにもあるように『一週間ごとに』それぞれの家で過ごすことになったようす。息子さんが二階でパパを待っている時、車に乗っている時も緊張の面持ちだったのは、『初めてパパの家に行く日』だったからかもしれません。
そして、初めてのパパの家に用意されていたのは、いままで住んでいた家の自分の部屋と全く同じ家具とインテリア。壁紙だって同じ色。出る時に持ってきたペンだって、同じ溝がある同じ机に置くことだってできるんです。
日本では民法により、離婚の際は父母のどちらかを親権者に指定する必要がある単独親権のみ。諸外国で認められている離婚後共同親権が認められていないため、面会交流などはかろうじてあっても、どちらかの親とのつながりが偏りやすいようで、日本ではこの『一週間ごとに』のような光景(離婚後の共同監護)は見られないかもしれません。
スウェーデンは1000人当たりの離婚率が2.5件(2015)で、その離婚率が高いことは残念なことではあります。(ちなみに日本は1000人当たり1.73件 – 2016年) もちろん、両親が別れて傷つかない子どもはいないでしょう。しかしさまざまな事情によって別れてしまっても、少しでもその傷をやわらげたいと、子を思う親の気持ちと愛が、この部屋をつくることにつながったのかもしれません。
まとめ
ということで、今日はIKEAのCMシリーズ “Där livet händer.” (その生活があるところに)から3作ご紹介しました。このシリーズは他にも4作あり、中には微笑ましい子どもたちの様子や、料理の途中で熱烈に燃え上がってしまったカップルがキスするだけのシーンのものなど、日常のさまざまなシーンを切り取っています。
日本のCMは家族が出てくる場合、どうしても『パパ、ママ、子どもふたり』みたいな、ステレオタイプの家庭像が、明るい光の中で幸せな笑顔を振りまく、そんな光景が多いような気がします。シングルファザーや養子の家庭、そして離婚した家庭なんて観た覚えがありません。(もう何年も日本のテレビを観ていないので、もしあったらごめんなさい)
明るいキラキラした家庭というのはもちろん素晴らしいな、とは思いますが、僕も実際に子どもを持ってみて、子育ての疲れや家族との関係など、キラキラしてばかりいられない毎日を送ってると、そんなCM『うそくせー』なんて頭をよぎったりするものです。
その点、このシリーズはとてもリアリティがあって、それでいてさまざまなカタチの家族があるんだなぁと実感し、印象に残りました。家族のカタチに、これだっていう正解はないんだと思える。それがここで紹介したかった理由です。
ということで、最後に日本のIKEAのCMもご紹介して、今日は締めさせていただきたいと思います。
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