2017年2月8日(水)
息子くんへ
今日は、お昼頃キルナを出て6時頃にはルレオについた。長いドライブのあいだ、きみはチャイルドシートにのっていなければならなかったから、途中よくぐずっていたけど、リカパパがずーっと歌を歌ったりしてくれて、なんとか頑張ってくれた。
このキルナへの旅はたった4泊だったけど、いろんなことがあって、もっと長くいたようにも感じる。とにかく充実したロングウィークエンドって感じだった。
そんな旅の帰り道、ルレオに戻る運転中、みつぱぱが考えていたのは、リカのいとこカップルが家で観ていたノルウェイの学園ドラマだった。
夜はダイニングでブログを書いていたんだけど、ちょうどとなりのリビングルームで彼らが観ていて、ちょうどいい角度でそのおおきなテレビ画面が目にはいってくる。
そのドラマは”SKAM”(スカム)と呼ばれるウェブベースのドラマで、ある高校の学園ドラマなんだけど、今はシーズン3。とても流行ってるらしい。
見るつもりはないのだけれど、目にはいってくるのは男子高校生同士のキスシーンやベッドシーン。そんなの見慣れてないみつぱぱ、正直ブログに集中するのがなかなか難しかったりした。
そして翌日の夕食時、そのドラマの話題になって、彼女がそれについて教えてくれた。
このドラマは登場人物は基本的に変わらないんだけれど、シーズンごとに、フォーカスされる主人公とテーマが変わっていくらしい。
シーズン1は、女子高生イヴァの恋愛や、孤独、友情について、シーズン2はその友達ノーラの恋愛や、フェミニズム、暴力、摂食障害なんかについてだったそうだ。
そしてこのシーズン3は、男子高校生イサクの、カミングアウトと恋愛、セクシュアルアイデンティティや、精神障害、宗教なんかについてフォーカスがあたってるらしい。
リカのいとこは、ソーシャルワーカーとして実際に高校で働いているそうだけど、このドラマはよくできてるし、教育としてもとても役にたつって言ってた。
こんな男子高校生同士のキスやセックスシーンがでてくるドラマがあったら、社会問題を含んだ真面目なテーマでドラマを描いていても日本じゃ逆に教育によくないなんて言われそうだな、なんてみつぱぱは思ったりしてた。それは残念ながら2017年の日本の姿だ。
このドラマはノルウェイの首都オスロが舞台だけれど、同じ北欧といえど、スウェーデン最北端の町、このキルナではどうなんだろうと思って、聞いてみると、この2年ぐらいでカミングアウトする人がものすごい増えたっていうことだった。それ以前は、指折数えるくらいだったそうだ。
そしてちょうどこのうちには、アフガニスタンからの難民である、15歳と17歳の男の子がいる。(リカのいとこが身元引き受け人となって一緒に暮らしているんだ。)
だから、彼らにも、学校でカミングアウトしてる子はいるかと聞くと、その15歳の子が「ある日、突然女性ものの服を着てきた、それまで男の子だと思ってた子はいる。でも誰も全然気にしなかったけどね」だって。
もうひとりの子も、女性だけど、女性が好きだって言ってる子もいる。って教えてくれた。
みつぱぱなんて自分の親にカミングアウトしたのが30歳のときだからね。自分が中高生のときにカミングアウトするなんて想像もつかなかったし、あのころは一生隠して生きていくんだろうなって思ってた。
いまじゃさ、リカパパと結婚して息子であるきみがいてっていう生活が毎日の日常になっているから、そんなことすっかり忘れちゃってたんだ。
消し去りたい過去、とかではないけど、そうやって思ってた過去の自分が、まるで自分の人生じゃなかったような気さえするぐらい、そのことを忘れてたし、いまの生活が充実しているってことなんだろう。
でもそのドラマを観て(チラ見だけどね笑)、その内容を聞いて、実際のスウェーデンの中高生の話を聞いて、なんていうのかな、切なくてたまらない気持ちになった。
正確に言うと、あのころの痛みみたいなものが蘇ってきちゃったって感じかな。自分が中高生のころにはそういう恋愛ができなかった悔しさもあるのかもしれない。
チラ見だけれど、そのドラマは、本当に映像的にも美しいし、でてくる若い役者さんたちも素晴らしいのがわかる。きっと脚本がいいのだろう。だから、とっても観たくなる。
だけど、それをしっかり観てしまったら、なんだかその痛みが全部蘇ってきちゃいそうで、怖くて観れないような気もしてる。ふだんはそんなセンチメンタルなキャラじゃないんだけどね笑
そうやって実際にカミングアウトの年齢層が下がってきているようすのこの北欧、きっとそのうちカミングアウトっていう感覚がなくなってくるのかななんて思ったりもした。クローゼットの中にこもる時期がなくなれば、そこからでてくるっていう感覚すらなくなるんだろう。
そういう世界にこれからしていかなきゃななんて、思っている2017年だけど、きみがこれを読んでいるころは、きみがきみらしく生きていけるようになっててほしいな、なんて考えながら、ルレオへの道をドライブしていたよ。