第25話 IVFクリニック選び④ スカイプコンサルと決め手編

第25話 IVFクリニック選び④ スカイプコンサルと決め手編


 

4回に渡ってお伝えしている、IVFクリニック選びについて。最終回の今日は、実際にクリニックのドクターとスカイプでコンサルを行い、その後どのように僕らがクリニックを決めたかということについてお話ししたいと思う。

 


ふたつの候補となった病院とその比較ポイント

 

前回お伝えしたように、僕らはほぼ同じ内容のメールをアメリカ各地にあるクリニックに送り、そこから実際にコンサルを受けることになったのだが、ひとつは西海岸にあるAクリニック、もうひとつは東海岸にあるBクリニックで、どちらも、エージェンシーから紹介してもらったところだった。

 

どちらのコンサルもほぼ1時間弱ほどで終わり、印象としては似たようなものだったというのが正直な感想だった。なので、なにが違うのかということを比べていくことにした。

 

 

胚移植の方法の違いは重要なポイントだったが、凍結胚移植のみを行うBクリニックのドクターはその成功率に大きな違いがないこと、そしてスケジュールの立てやすさが一番のメリットになることを説明してくれた。もともと僕らは新鮮胚移植の方がいいのではないかという漠然な思いがあったが、これで、凍結胚移植の知識やそのメリットを知ることができ、とても役にたった。(詳しくは第23話 IVFクリニック選び② 新鮮胚移植 or 凍結胚移植?を参考にしていただきたい。)

 

あとはそのクリニックの所在地も選ぶポイントになった。エージェンシーと違い、実際に自分たちが赴く場所となるクリニックは、最低でも一度は訪れなければならない場所だ。西海岸と東海岸とでは3〜4時間フライト時間が変わってくる。東海岸にあるBクリニックは、僕らにとって魅力的だった。

 

治療費の違いは、意外と大きかった。Bクリニックの方がAクリニックと比べ基本のプランで約4000ドル高かったのだ。その違いはなぜ現れるのかよくわからなかったが、エージェンシーにそのことを聞いたら、Bクリニックは割と評判もよく技術が高いなどよい評判が入ってくるいうことだった。そこのメインドクターが高度生殖補助医療に関して著名であり、生殖医療に関してのアワードをいくつかとっているということはあとから知ったことだったが、それも関係していたのかもしれない。

 

また、僕らが利用したエージェンシーとしては、 Aクリニックはいままでに何度も利用したことがあり、信頼できる病院だということを言っていた。Bクリニックはそのエージェンシーの中で利用したIPはいなかったようで、『実際にはその評判通りなのかわかりかねる』ということだった。個人的には自分たちが利用しているエージェンシーが今までにも一緒にやったことがあるというAクリニックは、魅力的だった。

 


クリニック選び、一番の決め手は?

 

いろいろ自分たちで考えて比較はしたが、なかなか決められなかった。そこでエージェンシーのコーディネーターに相談すると、一番大切なのは、そのドクターと話をして、自分たちがどれだけ信頼できるかどうかということだった。

 

一度のスカイプコンサルでそんな信頼が持てるかなどわからないよ、とも思ったのだが冷静に振り返ると、僕らにとってBクリニックのドクターは非常に好感の持てる方だった。

 

その理由のひとつに彼自身も2人の子どもを持つゲイの父親で、同じサロガシーによって子どもを授かった人だったというのは大きかったと思う。そして商業的サロガシーが認められているアメリカとはいえ、彼は商売としてだけでこの職に就いているとは思えない、静かな熱意みたいなものがあった。

 

それはあくまで僕個人の印象でしかないが、それは彼自身がその当人として、子どもを持てないという壁に直面し、それでも子どもを持ちたいという人の希望を叶えたいという思いがあったのかもしれない。

 

彼は、医学的見地のことだけでなく、自分の経験に基づいたアドバイスをしてくれたし、また、子どもが生まれた後のその子どものケアについてもアドバイスをしてくれた。ひとつ例を上げると、ゲイパパの子どもとして生まれてくる子へその出自の説明を、どのタイミングで、どこまでするのかということなどだ。

 

僕らのエージェンシーには、他に社会福祉士もいて精神的なサポートは彼らがしてくれるので、実質的な治療を行うドクターがそこまでしなくてもいいのかもしれない。しかし、このサロガシーの旅のまだまだ長い道のり、同じ立場に立ったことのある人が、実際に治療にあたってくれるというのはなんとも心強かった。

 

そしてコンサルが終わったあとには、そのコンサルで話した内容や、僕らのケースのプラン、どんなスケジュールで進めることができるかということを、書面にまとめてメールで送ってくれたりもした。

 

これは、専門的な医療用語などが多く、コンサルのときには落ち着いて理解できなかったことを、改めて読み返すことができたいい資料となった。これはAクリニックにはなかったものだ。そしてそんな丁寧なフォローアップができるこのドクターであれば、いろいろ任せられるのではないかという気持ちが湧いてきた。

 

 

 


最終的にはふたりの間の話し合い

 

こんなふうにしていろいろと考えあぐねたクリニック選び。僕らは最終的にBクリニックにお願いすることにした。

 

一番のネックは料金の高さだったが、総合的に考えるとそちらのほうがメリットが多いと考えていた。

 

この過程のなかで、大事だったのは常にぼくらふたりで相談してきたことだ。サロガシーのプロセスというのは周りに経験者がいなかったりもするし、カップルの両方が初心者でスタートラインは一緒だ。だからこそ、ふたりで逐一相談してすこしずつ自分たちにあったクリニックはどこなのかを探していくのが、大事だったと思う。

 

後日談にはなるが、僕らはこのクリニックで子どもを授かることができたし、ドクターには本当に感謝している。

 

サロガシーの旅のなかでも重要な位置を占めるクリニック選び、それは簡単ではないが、その過程をパートナーと共に歩むことで、生まれてくる子どもへの大きな愛情を育てることにもつながるのかもしれない、と、いまでは思ったりしている。

 


つづきはこちら

第26話 代理母になるための要件とそのプロセス / 代理母になるひとたちのこと①


連載「サロガシーの旅」が書籍化されました!

ブログでは第1、2章までが公開されていますが、残り半分の旅路も全てあわせて収録されています。

全国の書店、またはamazonでお買い求めください!