こんにちは。ふたりぱぱのみっつんです。
先日、といっても少し前になりますが、ご縁があり、東京にある日本科学未来館さん(以下、未来館)から取材の依頼を受けました。今日はそのお話をしたいと思います。
「みらいのかぞくプロジェクト」とは
今回のご依頼は未来館さんが2015年から継続して行っている「みらいのかぞくプロジェクト」(facebookページはこちら)の一環として、今年4月に実施されたニコニコ生放送によるトークイベントでインタビューの様子を放送するというもの。
テーマは「これからの”おやこ”のかたち ~第三者が介入する生殖補助医療を考える~」。
『その技術をつうじて子をもうけた「親」の立場にフォーカスし、お話を伺えないか』というものでした。
最初にこのお話を聞いた際には、匿名のコメントがリアルタイムで流れてくるであろうニコニコ動画での放送ということで、若干の躊躇がありましたが「みらいのかぞくプロジェクト」の趣旨をうかがい、ご依頼を快諾させていただきました。
そのプロジェクトの概要がこちら。
近年、価値観の多様化や医療技術、科学技術の進展によって、様々な新しい「家族」のかたちが現れています。代理母出産や精子提供・卵子提供など第三者が介在する生殖補助医療がおこなわれるようになり、親子の遺伝的なつながりも多様化しています。(中略)こうした状況のもと、「みらいのかぞくプロジェクト」では、未来館が培ってきた科学コミュニケーションのノウハウを起点に、科学技術面だけではなく、社会学・文化人類学的側面や制度のあり方、個々人の心持ちも含めて議論することにより、多様性を認めつつ皆が幸せに暮らせる社会に向かうきっかけをつくっていくことを目指します。(未来館HPより)
また、担当してくださった科学コミュニケーターさんといろいろなお話をするにつれ、僕自身が日頃から考えていたことと共通の思いがあったことも、お引き受けする大きな理由のひとつになりました。
それは『語り合うことができる場作り』をしたいという思い。
僕自身、このブログを始めたきっかけでもありますが、男性同士のカップルで親になるということや、サロガシーはもちろんのこと生殖補助医療についての情報が少ない状態で、拙速な議論や噂の域をでない情報だけを鵜呑みにして批判がなされるというのは、残念なことだと思っていました。せめて、実情というかたくさんの情報が土台としてあって、そのうえでの自由な議論がなされればと。
このプロジェクトでは、その他にもヒトゲノム編集についてや出生前検査についてもテーマに取り上げ、様々な角度から「みらいのおやこ」の展望をさぐっているようですが、今回は~第三者が介入する生殖補助医療について考える〜のがテーマ。
4月に放送されたニコニコ生放送は、僕は拝見することができませんでしたが、その様子がブログでアップされたと連絡をいただき、こちらでも紹介させていただくことにしました。ブログは三本立てということで、次のように分かれています。(オレンジのところからリンクで読むことができます)
1.ゲストのお話
・第三者が介入する生殖補助医療とはなにか
・日本をとりまく実態や課題
・日本と海外の比較・第三者の精子提供で生まれた子ども
・代理出産により子どもをもうけた親
・不妊治療の経験がある不妊カウンセラー視聴者の意見を聞きながら、社会のあり方を考える
僕が登場するのはインタビューパートですが、みなさんにはぜひ、3本まとめて読んでいただけたらと思います。生殖補助医療に関する状況や背景、当事者の話、そして議論の場、と順序良く読みやすいと思います。
視聴者からの反応を読んで、感じたこと。
今回のブログで僕自身が一番楽しみにしていたのは、最後のアンケートパートでした。ニコニコ生放送だからこそ、リアルタイムの声がスタジオにも届くということで、顔と顔を突き合わせてする議論とは違うかもしれませんが、顔が見えないからこそ発言する人の本音が見えてくるのかな、なんて予想をしていました。
設問はつぎの三つ。
1.精子提供に関連し、「親から子どもへの告知」
2.代理母出産に関連し、「子どもをもうける方法」
3.不妊や不妊治療への悩みに関連し、「誰もが排除されない社会」
視聴者の方からの反応は僕にとっても意外なものでした。詳しくはそちらのページを読んでいただきたいのですが、もっと保守的(生殖医療に対して否定的)な意見が大多数かと思ったら、そうでもないことが数字で現れたこと。
またブログでも書かれているように、
興味深かったのは、視聴者同士のコメントで会話が成り立っていることです。第三者が介入する生殖補助医療という繊細なテーマについて知らない人同士が互いの異なる意見に触れ、会話までできているということに驚き、そして嬉しくもありました。
もちろん実際の放送で流れたコメント全てがこのブログに掲載されたか、僕にはわかりませんが、『語り合うことができる場作り』がそこにはあり、その材料として僕らの経験を使っていただけたことは、本望だったなと思います。
また、番組中のコメントだけでなく、視聴者から届いた一通のメールも最後に紹介されていました。第三者が介入する生殖補助医療により子どもをもうけた1人の母親からのものでした。
「子どもに出自(提供者の情報)を伝えるのは絶対にタブーだと感じている。また、子どもが何歳になったら(第三者の介入で生まれたことを)告知すればよいか悩んでいる。(後略)」
僕らの場合、子どもの出自を隠すことは、ゲイカップルの親である以上、土台無理なはなしであり、インタビューパートでも書かれているように「すべてありのままを伝えたいと思っています」とお答えしました。しかしそのメールの方の切実な言葉を読み、僕らの置かれている環境が、日本に比べいかに恵まれているかを改めて気づかされることになりました。
自分の子どもに出自を隠すということは、地域の人や友達、ときには家族にも隠さなければいけないことが多いと思うのです。それを胸のうちにしまい続けなければならないとしたら、辛いだろうと勝手ながら想像してしまいました。しかしその道が簡単ではなかったからこそ、待望のお子さんをだきしめたときの気持ちや、その後育てる中での愛というものが、大きくなるのではとも思います。
第三者が介入する生殖補助医療、と聞くととてもかたく冷たい印象もありますが、実際にそれによって命を授かった息子は、僕ら両親だけではなく、卵子提供者さんや代理母さんの愛と優しさを受け、ふつうよりもさらに多くの愛を受けて生まれてこれたのだと思っています。インタビューでお答えした『代理母さんからいただいたアルバム』を開くたび、それを思わずにはいられないのです。
そして生まれてからも、他の家族や地域の方が、伝統的なかぞくのかたちに縛られず、寛容な心でこの『これからのおやこのかたち』を受け入れてくれたことも、これからの息子の成長にとって大きな糧となるはずです。
日本ではまだこのテーマでオープンに語られる場が少ないと思いますし、こういう場を設けること自体勇気のいることだったかもしれません。しかしこのブログの最後にはこういう言葉もありました。
視聴者のみなさんが本当に温かく真摯に一緒に考えてくださったおかげで、繊細なテーマながらも貴重で有意義な時間にすることができたと思っています。
このことを聞き、またこのイベントに関わることができ、日本でもこれからこういった建設的な議論が行われるのではないかと期待せずにはいられませんでした。また、自分自身もまだ知らないことを学べた機会になり、これからも地道にいろんなことを知る努力をしていきたいなと改めて感じた次第です。
今回は自分の思いを書くためにところどころブログから引用させていただきましたが、みなさんにはぜひ、3本まとめて読んでいただけたらと思います。
「これからの”おやこ”のかたち ~第三者が介入する生殖補助医療を考える~」
日本科学未来館 科学コミュニケーターブログ