ゲイの社員が育児休暇をとりたいと言ったら?

ゲイの社員が育児休暇をとりたいと言ったら?

こんにちは、みっつんです。ゲイパパの日常をお届けしたく、ここスウェーデンから『ふたりぱぱ日記』をお伝えしております。

 

僕とリカは現在ふたりそろって育児休業中。

 

もしあなたの職場で、ゲイを公言している社員が育児休暇をとりたいと言ったら、みなさんはどう思いますか?

 

ということで、今日は育児休暇についてお話したいと思います。

 


イギリスの育児休暇制度

 

お伝えしている通り僕らはいま、リカの実家のあるスウェーデンに短期滞在しているのですが、法律上の居住地はイギリスです。ということで、まずは、イギリスの法律で保障されている育児休暇制度について。

 

基本的なことだけものすごく簡単に言うと、

  • 出産育児休暇は52週間とれて、
  • 出産手当は最長39週間もらえる。
  • その手当は定額で週136.78ポンド(≒2万4,000円、2014年4月現在)か、給与の90%のいずれか低いほうが事業主から支給される。(低所得者と自営業者は国(雇用年金局)から支払われる)

(参考資料 [1] [2]

 

ちなみにこちらの制度、以前は母親が対象であり、父親にはそれとは別に短い育児休暇の権利が保障されていました。しかし、2015年4月に法律が変わり、出産育児休暇を、両親の間でシェアできるということになり、父親も育児休暇をとりやすくなりました。

 

これらは、法律で最低限保障されている期間や手当の額と言え、それ以上の手当額や育児休暇の期間は、企業によっても差があるようです。

 

 


養子縁組・サロガシーの育休

 

さて、さきほど法律が変わり父親も育児休暇がとりやすくなったと言いましたが、男女間で労働者が平等にその権利をえられるか、という観点から変更が行われたものです。そしてそれらの変更は男女間のみならず、その他のジェンダーや性的指向、またその子どもを授かる方法がどうであれ、平等に扱われるものとしています。

 

つまり、労働者全てが、平等の権利を得られるための変更だった、ということですね。

 

そのひとつとして、養子縁組を行いこどもを養育することになった親や、サロガシー(代理母出産)によって子どもを授かった親(インテンディッドペアレンツ)なども、それまであった勤続期間の条件などがなくなり、子どもを自ら生んで親になる人たちと同じように、育児休暇や働き方を請求する権利が平等に得られるようになりました。[3]

 

こういった情報はGOV.UKという政府のサイトから得られるのですが、それまではサロガシーによって子どもを授かるインテンディッドペアレンツに対しての記述はほとんど見られなかったのに、ここ1〜2年で一気に増えた、変化したな、という感触がありました。

 

こういったことが法律で保障されるということは、非常に重要で、もし自分の働いている職場の上司やの人事部が、従来の家族のカタチと違うものに対して知識・理解がなかったとしても、

 

『いや、法律で保障されてるんです』

 

と、堂々と言えるというのは、非常に心強いことだなと思います。

 

 


実際のケース

 

ロンドンに住む僕らの友だちのゲイカップルも、今年の初めにトラディッショナルサロガシーで子どもを授かり、実際に育児休暇をシェアしています。最初の13週(約3ヶ月)はふたり同時にとり、それ以降は片方のパパが残りの26週をとることにしたそうです。

育休グラフ

 

僕らの場合は、少し特殊なケースかもしれません。僕らはできるだけ、ふたりで子どもとの時間を長く過ごしたいという気持ちがありました。なので、実際には育児休暇をシェアしたわけではなく、リカがその52週の休暇を全てとり、僕はフリーランスなので、正確には育児休暇をとらずにロンドンでの仕事を全て断り、その時間を育児にあてるというふうにしました。

 

バージョン 2

 

このように友だちの勤める会社や、リカの会社でもそうですが、ゲイだからといって、育児休暇がとりにくいということはないようです。

 

というのも、ロンドンの企業ではダイバーシティにとても力を入れていて、ライフスタイルが違う各社員に対し、福利厚生を公平(equity)に与えることに力を入れている、というのが実感としてあります。

 

ただ先述の”2015年の法改正”以降も、男性はまだまだ育休をとりにくいという調査結果もあるようで、むしろ、ゲイ男性の方が取りやすいんじゃないかと思えるほどです。

 

実際、リカも会社からはもう少し短い期間で戻ってきてほしい、と言われたようですが、人事や直属の上司との交渉を重ね、52週の育休をとれることになったようです。

 

やはり先ほどもすこし書きましたが、法律で保障されている最低限の権利はあると言え、それ以上の保障(休暇期間の延長や、休暇中の給与の支払いの額など)は、勤め先の企業との交渉次第なんだなと、思った次第です。

 

 

 


まとめ

ということで、今日は育児休暇についてお話ししました。やはり大事だなと思ったのは、

 

  • 法律で保障されている権利を知ること
  • 雇用主(特に人事)と交渉してみること

 

ということだったかな、と思います。

 

日本ではまだまだ厳しいよ、というお声も聞こえてきそうですが、近年「結婚祝い金」などを同性カップルにも出す企業がでてきているようです。少しずつではありますが、確実に変化は起きているのでしょう。

 

法律が変わるのを待つより、企業や人が先行して、社会を変えていくということは自然の流れだと思います。

 

ゲイの社員が育児休暇をとると聞いて、それが特別なことに感じない日が来ることを期待したいと思います。

 

今日も最後まで読んでいただきありがとうございます。

 

 


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出典

[1] イギリスの児童福祉・家族政策についてのヒアリング調査報告・2 /大石亜希子, p76
[2] Modern Workplaces Consultation – Government Response – Equality Impact Assessment (EQIA) on Flexible Parental Leave and Flexible Working / HM Government p4~5
[3] Modern Workplaces Consultation – Government Response – Equality Impact Assessment (EQIA) on Flexible Parental Leave and Flexible Working / HM Government p16

 

画像出典:Fatherhood by Mateus Lunardi Dutra via Flickr, Licesed under CC BY 2.0