第21話 遺言書を書く

第21話 遺言書を書く


サロガシーの旅、この第2章は、選択、決断、そして書類の嵐と名付けたのだが、その一発目といえるのが、遺言書(a will)を書くという仕事だ。

 

遺言書を書くなんてことは、一生自分には縁のないことで、そんなことをするのは、金持ち土地持ちの高齢者ぐらいだと思っていたのだが、これが、サロガシーの旅においてはとても重要なことだったりする。

 

今日はその理由や、内容などを簡潔に、そして僕らの場合どうしたかをお伝えしたいと思う。

 

 


遺言書が必要な理由

 

サロガシーの旅の中で、遺言書を書かなければならない一番の理由は、実際に代理母が妊娠した後、もし僕ら二人が同時に事故で死ぬようなことがあった場合、その生まれてくる子どもに関しての扱いをどうするかということであると言える。

 

遺言書は、英語では”will”と呼ばれるのだが、それは『意志、意向』などという意味もある。依頼主であるIPが同時に死亡した場合など、残された子どもが引き取り手がないなどといったことがないように、あらかじめその意志を表明するためのものである。

 

その内容は、ほんの少しの例として、下記の遺言書、その内容の項で触れる。

 

 


遺言書を書く時期

 

遺言書の作成は、サロガシーの旅のわりと早い段階で行わなければならなかった。

 

時期的にはエージェンシーとの契約を終えてすぐ、病院選びとほぼ並行して行い、実際の治療が始まる前までにエージェンシーに提出するというかんじだ。逆に言うと、遺言書の作成・提出が終わらなければ、実際の治療に入ることはできないとも言える。

 

その理由は先にもお話した通り、子の命ができるまえにIPの意志を表明しておく必要があるからだ。

 


遺言書、その内容

 

遺言書は、特にサロガシー専用のものがあるというわけではないのだが、おさえておかなければならない項目がいくつかある。僕らのエージェンシーの場合、遺言書のフォーマットのようなものがあり、それを元に、自分たちの在住している国の法律も鑑みて、地元(ロンドン)の弁護士に作成してもらうこととなった。

 

下書きを作成するということで、弁護士と三人で会った。僕らはサロガシーのプロセスを目前に控えていることを弁護士に伝え、エージェンシーから送られてきたフォーマットを見せ、彼はそれを元に僕らに質問をして、必要項目をメモしていった。

 

その内容はといえば、生まれてくる子どもの保護者は誰になるのか。そしてふたりの財産は何がどれぐらいあって、僕とリカと別にするのか・一緒にするのか。ふたり同時に死んだ場合は誰にどういった割合で分配するのか、その手続きの責任者は誰にするのか、といった具合だ。『それ必要なのか?』と思うような、死後の葬儀や埋葬の方法の希望まで聞かれた。

 

 

下書きの作成は一時間ほどで終わり、面談が終わった。遺言作成というと大げさな感じがするが、終わってみるとわりとあっけなかった。それもそのはず、基本的には法律のプロにお任せするわけだから。

 

その後、全体をまとめた下書きがメールで送られてきて、そのチェックを何度か行い、最終稿を清書とし、二部作成し、一部は自分たちで保管、もう一部はエージェンシーへと送った。

 

 


遺言書を書いてみて…

 

遺言書を書くのが大事なことであるのは、頭ではわかっていた。しかし今から子どもを持とうと明るい未来を見つめているのに、子どもの顔を見ずに死んでしまうシチュエーションを想像するというのは、少し変な感じがしていた。

 

それと同時に、子どもを持つということはそういうことなんだなと、責任という言葉を感じながら、また一段と神妙なおもいになったことを覚えている。まだ妊娠してもいない子どものことを考えて、準備をする、これが親になるということなのだろうか。

 

しかしただ親になるということだけではない。サロガシーという特性上、たくさんの人に助けてもらって、子どもを授かろうというのだ。それに関わるひとすべてに、僕らに何かあった場合、迷惑がかからないようにするためであることも、最後に付け加えておきたい。

 


 

つづきはこちら

第22話 IVFクリニック選び① リサーチ編

 


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