第2章 選択、決断、そして書類の嵐
サロガシー・代理母出産と聞いたり見たりして、双子を授かった人たちの写真を見たことがあるかたも、多いかもしれない。IVFという技術を使うことで、実際に多胎妊娠になる可能性は、自然妊娠に比べ、多い。そんな双子ちゃんに関して気になるかたもいるかもしれない。今日は、それについておはなししたい。
ふたつのプログラムと妊娠の成功率
これはエージェンシーによって違いがあるかもしれないが、僕らが利用しところでは次のふたつのプログラムがあり、どちらかをあらかじめ契約の際に、選ばなければならなかった。(その他の条件やプログラムもあり、実際にはこのふたつだけではないが、ここでは簡潔にするためにこのふたつのみをご紹介する。)
- シングルトランスファー (単一胚移植)
- マルチプルトランスファー(複数胚移植)
簡単にいうと、IVFによって受精させた受精卵(胚)を代理母の子宮に移植する際に、ひとつずつ移植するか、ふたつずつ移植するかの違いだ。シングルは多胎妊娠の可能性はないが、マルチプルは、多胎妊娠の可能性が高く、双子を授かる可能性が高い。
しかし実際には、この選択は、双子が欲しいかどうかという希望だけで選ぶわけではない。もうひとつ押さえておきたい重要なポイント、妊娠の成功率に関してのデータだ。
次のデータは、某エージェンシーのハンドブックからの抜粋なのだが、そのエージェンシーを利用し出産までいたったケースは、
- 単一胚移植を1回 = 約50%
- 単一胚移植を4回 もしくは 複数胚移植を2回 = 約91%
- 単一胚移植を6回 もしくは 複数胚移植を3回 = 約98%
(データはすべて平均値)
ということだ。このデータでは複数胚移植でも、双子とならず、一人だけが着床・妊娠・出産にいたった数も含まれている。このデータのみを参考にするならば、単純に複数胚移植のほうが、確率が高いと言える。
費用の違い
またそのプログラムの違いにより、費用も変わってくる。多胎妊娠は、妊娠・出産に際し、母体への負担も大きく、健康上のリスクも高くなるために、それに対する補償も高くなり、プログラムの費用はマルチプルトランスファーのほうが高くなる。それが、契約の時点でどちらかを選ぶことになる理由のひとつだったのかもしれない。
しかしシングルトランスファーのほうが妊娠の成功率が低いということは、移植の回数が増える可能性もあり、代理母がIVFクリニックに通う旅費も増えたり、移植サイクルをなんども行うことで代理母への負担が増える可能性があることを考えると、一概にどちらがいいとは言いにくいかもしれない。
僕らの選択
これだけ聞くと複数胚移植のほうが断然いいようにも聞こえる。しかし実際には単一胚移植を望むIPもいる。子どもを授かるためのサロガシーの旅のおわりは、長い子育ての旅のスタートになる。双子を育てていく環境、経済状況などがない場合、最初から単一胚移植を望む方もいるそうだ。
そして僕らはマルチプルトランスファーのプログラムを選んだ。成功率の高さは、やはり魅力的だったし、生まれてくる子どもに兄弟ができることも望んだからだ。
しかし、同時にふたつの胚を移植したからといって、かならず双子を授かるというわけではない。結果からいってしまうと、僕らの場合、ふたつの胚を同時に移植したのだが、妊娠にいたったのは、そのうちのひとつだけだった。この話は、また第4章でお伝えしていきたいと思う。
このブログの常連読者さんであれば、もう聞き飽きたフレーズかもしれないが、サロガシーの旅は、経験者のそれが、そのままあなたのロールモデルにならないことが多い。こちらも参考程度にとどめていただき、実際にされる際には、エージェンシーのコーディネーターや、クリニックのドクターによく話を聞いて、ご自身に合った決断をしていただけたらと、思う。
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